CdLS Japan 翻訳ニュース2001年2月号

原題;Facing Up to the Behavior Challenge (Reaching Out 2000 年 4 月号より)「問題行動に関する考察」

by Dr.Philippa Hyman and Prof.Chris Oliver. イギリスの CdLS foundation(財団)の報告 Dr Philippa と Oliver 教授はバーミンガム大学の心理学者で、CdLS 患者の行動を研究しています。問題行動について、なかでも、自傷行為(SIB;Self Injurious Behavior)について、理解を深めるためです。イギリスの財団を通して、200名をこえる患者の両親や養育者に、郵送によるアンケート調査を実施しました。

これまでの研究では、自傷行為(SIB)は CdLS 患者に高い頻度で見られると報告され、CdLS と強い因果関係があると考えられてきました。しかし、他のいくつかの研究では CdLS 患者の SIB は全く報告されていません。従って両親や養育者や専門家達にとってこの行為がCdLS と関係があるのかどうかはいまだ不明瞭な問題です。

 

加えて、親との関係が考えられる他の問題行動(身体的攻撃や破壊行為など)についても詳細な研究は行われていないのです。SIB の原因については様々な学説がありますが、今のところ広く受け入れられている説はありません。

 

SIB は他者(例えば両親)との意志疎通の意味をもつと信じている医者もいます。この説は、患者はことばによる十分な欲求を表現できないために、SIB をひとつの行動として採用したと論じています。患者が SIB を行えば養育者から反応を得ることができるということを学んだのだと。これは

SIB が患者の意識統制下にある行動(コントロールできるもの)だということを示唆しています。そこで私たちは SIB への養育者の対応を介助し、自傷行為を示す患者がコミュニケーションをうまく図れるよう導いたところ、何人かについては成功を収めました。しかし多くの患者はこの治療法を試みても自傷行為を続けました。

 

この失敗によって研究者たちは SIB にはもっと複雑な原因があり、異なる治療法が必要であろうという結論に達しました。多くの研究論文が SIB は CdLS の重篤な特性だと記しており、それは患者のコントロール不能な行動でおそらくは強迫的(強迫とは、無意味で不合理と思われる考えや行為が本人の意思に逆らって支配的となる現象をいう)ものだと論じています。もし SIB がひとつの強迫的行動として示されれば、これは客観的に見て別の治療法(強迫行動に応じた)を必要とする患者が存在することを暗に示唆しています。この説の根拠は、SIB を行う患者の中にそれをなんとかしてやめようとする患者がいることです。これは自己抑制と呼ばれ、例えば服の中に腕を入れたり手の上に座ったりする行動でわかります。

 

 

 

 

これは私たちの研究の、第2の目的となりました。すなわち SIB を行うCdLS 患者がSIB は患者自身でコントロール出来ない行動だと言うことを示す自己抑制行動をとるかどうかということです。

 

私たちはまた、これら SIB と自己抑制と両方を示す患者がもっと強迫的な行動を示すかどうかも調べました。

 

問題行動があると認められる86名の CdLS の養育者に、イギリスの財団を通じてアンケートをとりました。解答した主な養育者は、母親62名(72.1%)、父親9名(10.5%)です。患者は、86名のうち、45名(52.3%)が女性で41名(47.7%)が男性です。年齢は1歳から38歳まで、平均年齢は12.5歳。79名(91.9%)が自宅で生活しています。

 

最も共通する問題行動はSIB で54名(62.8%)に認められました。平均年齢は14.2歳で SIB

のない患者よりも高い年齢層です。他に広く認められる問題行動は表1の通りです。

 

 

身体的攻撃、常同行為(型にはまった同一の行動の繰り返し)、破壊的・分裂的行為が高頻度で報告されています。これらの結果から CdLS 患者には SIB だけではなく様々な問題行動があるだろうと推測されます。患者の多くに複数の問題行動があり、19名(22.1%)は4つすべての問題行動をもつと報告されています。

 

・これらの問題行動において男女の差はない。

 

 

・高い頻度で問題行動が見受けられるにもかかわらず64名(74.4%)の患者が何の心理的治療も受けていない。

 

・CdLS ではない学習障害(LD)患者の研究に比べて、SIB・身体的攻撃・破壊行為が高い割合で認められる。SIB が10~20歳のグループに最も多く見受けられることでは他の学習障害患者の研究と一致する。

 

・86名中、47名(54.7%)が何らかの自己抑制行動をとった。興味深いことに SIB が認められるうちの35名(64.8%)が自己抑制も行っている。加えて、「SIB」と「自己抑制」と「常同行為」は関係があると思われる。これはこれら3者の関連を見いだすための最初の研究となった。

 

・強迫的行動は5つに分けられた。

整頓・確認・完璧(主義)・清掃・身支度(身づくろい)。37名(43.5%)に、「整頓」を共通とする

5つ以上の強迫行動が見受けられた。少なくとも1つの強迫行動を示す患者は53名(61.6%)

 

 

だった。表2は最も頻繁に報告された強迫行動のタイプである。

 

 

・常同行為・SIB・抑制行動が見受けられた患者は、これらの行動を示さない患者に比べて強迫行動をとる割合が高かった。このことから自己抑制行為は強迫的で不本意な行動である SIB に抵抗しようとする試みであろうと推測される。

 

<結論>

・86名の CdLS 患者の、重要な情報が集まりました。調査に協力して下さった両親、養育者、家族のみなさん、そして財団に感謝します。これは CdLS 患者の行動に関する研究では2番目に大がかりな物です。(1990年に Dr.Tom Gualtieri が88名の患者について研究しています。)他の大規模な研究は主に CdLS 患者の発達や医学的な見地からのものです。

 

・この研究は、CdLS ではない重度の学習障害者に関して行われた過去の研究と比較して、

CdLS 患者の SIB・身体攻撃・破壊行為が高頻度で見られることを示しました。しかしながら、より直接的な比較がなされることが肝要であり、将来的な研究においては養育者の影響が関与すると思われるすべての問題行動に焦点が当てられるべきでしょう。

 

・SIB・常同行為・強迫行動と自己抑制行動との関係は、SIB が数人の患者にとっては「強迫的行為」であろうという試験的証拠になりました。しかし、これらの発見を発展させるためには更なる調査が求められ、それによって養育者の影響があると思われる問題行動に対応したより効果的な療育方法を確立できるでしょう。

 

・CdLS 患者のすべてが問題行動を示すわけではないにしろ、例えば何が SIB のような問題行動の要因なのかを調査研究することはとても重要であり、こうした問題行動の複雑な発達過程を幼児早期から思春期に至る過程で研究することが必要となります。もしこれらの要因がはっきりすれば早期の療育プログラムによってこれらの問題行動を減少させることが可能となるからです。

 

・将来的にはもっと幼い CdLS 患者についてSIB に結びつくような芽を探す研究をする必要があります。新しい調査はこれらの諸問題をカバーしていくべきでしょう。

 

表1;CdLS 患者の問題行動に占める人数と割合

自傷行為

54人(62.8%)

常同行為

49人(57.0%)

破壊行為

45人(52.3%)

身体的攻撃

36人(41.9%)

 

 

表2;CdLS 患者に最も多く報告された強迫的行動と割合

開いているドアを閉める

36人(41.9%)

繰り返し触ったりたたいたりする

35人(40.7%)

同じ椅子や場所にこだわる

34人(39.5%)

物を完璧に配置する

27人(31.4%)

きちんと並べられた椅子を好む

27人(31.4%)

 

翻訳;加藤 美保子・下村 明 美編集・発行;CdLS Japan 事務局

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